ダイヤ買取の大きな魅力

現代アメリカの小売業者の例にもれず、この店もコーヒーショップを併設しており、買い物客が飲み物をもってひと休みすることができる。 スーパーマーケットのコーヒーショップを見たのは初めてでお買上品預かり所もある。

全体としてものごとがいかに動いているかを真に理解している店を見たのは、これが初めてだった。 そこでは、ショッピングカートにもカップホルダーがついていたのだ。 つまり、ドリンク&ドライブができるというわけだ。 この賢いひと工夫でコーヒーの売上げが伸びることは間違いない。

「どうお考えですか?」そう言うなり、このグラフィック・デザイン会社の重役は、合計500あまりの店舗に配布する予定の掲示板を取りだした。 私は空調のきいた会議室で、快適な椅子に座っている。 高価な紙に美しく印刷され、プロの手による精織な装飾がほどこされたレタリングは、完璧な照明のもと、最適な距離に置かれている。 会議室は水を打ったようにしんとしている。
「そうですね」。 私は口を開く。
「どう考えていいか、わかりませんな」あちこちで心配そうな視線が交わされている。 私の言ったことで心配になったのではない。
私のために心配しているのだ。 「わからないとは、どういうことでしょう?」重役がたずねる。
「あなたなら、おわかりのはずではありませんか?」看板や掲示板を有効利用するにはS看板や掲示板を有効利用するには そこで、私は説明しようとする。

まず、客の全部が、私がここで見たのと寸分たがわぬ条件でこれを見るのでないかぎり、史上最高の掲示板なのか、それとも悲惨きわまる失敗作で、時間と場所と金が無駄になるのかは判断できない。 そもそも考えてみてほしい。 商店やレストランや銀行で、人は片時もじっとしていないものだ。 あちこち動きまわっているではないか。 それに客は、わざわざ文字を読もうとするわけではない。 それどころか、まったく別のことをしているのがふつうだ。 靴下を探したり、もっとも早く動きそうな列を見きわめたり、ハンバーグとチキンのどっちにしようかと思案したりするのだ。 そういう状況に加えて、新しい案内の文字の距離が遠かったり角度が悪かったり、背の高い人の頭に隠れていたり、照明の具合がよくなかったり、誰かに話しかけられたりして注意をそらされる。
要するに、と私は話を締めくくる。 「会議室で掲示板の原案を見るのはグラフィック・デザイナーにとっては理想的かもしれないが、その成否を判断するには間違いなく最悪の方法ですね」掲示板をはじめとした店内のメディアの効果を評価する方法は一つしかない。 その場所に、その店のフロアに置くことだ。 現場に置いてさえ、ことは容易ではない。 まず、どれだけの人に見られているかを数える。 それから掲示や案内の文句が本当に読まれているかどうかを判断しなければならない。

読まれなければ、最高の掲示板といえども効果はゼロだからだ。 しかも、ぼんやり眺めた場合と、きちんと読んだ場合の時間差は、せいぜい2、3秒。

このことからも、われらが調査員の苦労が推測できようというものだ。 彼らは掲示板の背後にそっと立って、客のわずかな目の動きを追いかけ、同時にストップウォッチを切り、この男性はあの掲示板に4秒間見入ってから、あのポスターに視線を移して3秒眺めた、などと厳密に測定する。
ぶっつづけに何時間も、何百人もの客を何千分も観察し、所見のすべてを総合して初めて、ある掲示板の良し悪しが言えるのだ。 やってみればわかるが、これは楽な仕事ではない。

だが、ほかに方法はないのだ。 私の知るかぎり、国内でこの種の業務を請け負うのは、わが社のほかにない。 掲示板の読みやすさを評価する会社はある。 人の眼球の微妙な動きを感知するハイテク・ヘルメットを被験者にかぶらせ、掲示や案内を見せる。
だが、これでは正しい掲示板を間違った場所に置いてもわからない。 そういう例は実に多いのだ(ついでに言うなら、そこそこの掲示板を完璧な場所に置くよりもはるかに悪い)。

ましてや、気を引くものだらけの店内で客が掲示や案内の文字を読み、それに反応するかどうかを判断するなど不可能だ。 客がそれらを読んだとわかれば、つぎは客の行動にそれがどう影響したかを測定する。 だが、それはまだ先の話。 まずは、この会議室をでなければならない。 看板や掲示板を有効利用するには偉大なる巨大3次元ウォークイン・テレビコマーシャル。 テレビコマーシャルの脚本、監督と同じく、問題は何を、いつ、どのように言うかだ。 まず、視聴者の注意をひく。 それができたら、明快かつ論理的なメッセージを提示する。

序論、本論、結論と。 人びとが吸収しやすいように情報を伝える。 一度に少しずつ、適切な順序で。 そもそも注意をひくことができなければ、そのあとで何をやろうとしても無駄である。 初めからあまり多くのことをつめこみすぎれば、相手は重荷と感じて読むのをやめてしまう。 メッセージがわかりにくければ、あっさりと無視される。

人びとが足を踏み入れると、このコンテナがいろいろなことを語りだす。 すべてがうまく機能すれば、そのメッセージが人の注意をひき、それに目をとめた客は眺め、物色し、買い、ことによると他日また買い物にくる。 語られるのは、商品が客のために何ができるか、そして、いつ、どのようにできるのかだ。 掲示や案内のようなメッセージ・メディアのデザインと設置場所についてよく間違われるのは、それらが店のなかのものという考えかたによるものだ。看板や掲示板などは店を超えたものである。 それは3次元のテレビコマーシャル、言葉や思考やメッセージやアイデアをつめこんだウォークィン。コンテナなのだ。 店内メディアを誤解していないかこれは従来も言われていたことだ。 だが、現在とくに重視されている大きな理由は、購入の決定が店内でなされることが多くなったためだ。 消費者の可処分所得が増え、ブランドなどへのこだわりが薄れるにつれ、彼らは自分の衝動にしたがいはじめた。

ブランドに頼ったマーケティングと伝統的な広告手法のインパクトはいまや薄れた。 そういうものには、誰もがうんざりしている。 マーチャンダイジングの役割は従来になく大きい。 製品が死ぬも生きるも売り場しだいなのだ。 客に何かを知らせる機会を無駄にはできない。 しかも、買い物客はかつてなく時間に追われている。

昔のようにのんびりした客はいない。 売りものがすべてオープンに陳列された店に慣れ、必要な情報がすべて表示されていることを期待する。
わざわざ店員に道を聞いたり、新商品の説明を聞きたがる者はいない。 いずれにせよ、店員などいないのだ。 昔はコーヒーショップで読むものといえば、メニューと《デイリーニューズ》しかなかった。 いまやどんなに狭いスターバックスにも、二カ所に掲示や案内があり、無脂肪のエッグノッグから、抱きあわせ企画としてテレビの人気司会者O・Wのブッククラブまでさまざまなお知らせが客の目をとらえようとしている。
そういうわけで、店内をぐるっと見まわして壁面のあいているところを見つけ、そこに案内文を貼るだけではだめなのだ。 カウンターを片づけ、インストア・メディアをぶちまけるだけではいけない。


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